メッセージ

2021.4.28

「分散電源(DER)の価値の顕在化」

代表幹事 岡本 浩
(東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長)

昨年8月にスマートレジリエンスネットワーク(SRN)が設立されましたが、おかげさまで多くの関係者の賛同を得て、3つのワーキングの活動も立ち上がり、会員数も90に上るまでになりました。エネルギーを巡っては、SRN設立後に菅首相による2050年までのカーボンニュートラル方針表明(2020年10月)、LNGの在庫低下による全国的な電力需給ひっ迫(2021年1月)などがあり、分散型電源(DER)の有効活用への期待がますます高まっています。

需給ひっ迫の際には、私自身も電力需給の現場で大変緊張した状況を経験しましたが、懸命のLNG調達に加えて、お客さまによる節電や自家発電のご協力、電力会社・ガス会社との電力・ガスの融通などのあらゆる手段によって、何とか危機を脱することができました。多くのお客さまにご迷惑とご心配をおかけしたことを大変心苦しく感じていますが、将来のエネルギー需給のあり方に関していくつか学びがありました。

第一に、これからカーボンニュートラルに向かっていく上でも、エネルギー源や技術の多様性を確保すべきであるということです。現在、我が国では一次エネルギーの多くをLNGの輸入に依存しており、コストが高い石油火力が減少、原子力発電の稼働も非常に限定的です。現在の日本はLNGの在庫不足が直ちにエネルギー全体の需給ひっ迫を招く脆弱な状況にあると言えます。今回は石油・石炭などを燃料源とする自家発電にも支えられましたが、脱炭素化が進めば、これらが退出していく可能性が高まっています。

第二の気づきは、お客さまの自家発電設備などDERの見える化やデジタル技術の活用が必要であるということです。今回、休止もしくは余力のある自家発からの電気を購入させていただきましたが、電力会社の関係者が自家発を保有されるお客さまの連絡先を一つずつあたって電話等でご連絡させていただき、買電の交渉をするという大変アナログな人海戦術でアプローチせざるを得ませんでした。

今後さらに導入が進むDERについて、グリッド上のどこに接続され、どのような稼働状況であるのか、余力はあるのかなどの情報が一元的に把握されて、DERが参加可能な市場と連繋されれば、需給ひっ迫で全国大の電力市場(JEPX)価格が上昇すると、自動的にDERが参加・増出力して、需給ひっ迫が緩和に向かう方向に働くようになると考えられます。このような情報とグリッド側の情報を重ねた情報基盤をつくっておけば、需給ひっ迫時のみならず、自然災害でグリッドの一部が使えなくなって系統電源からの供給が途絶した場合や、グリッドの混雑緩和や、P2P(ピア・ツー・ピア)の電力取引など常時にも活用できるでしょう。

SRNではDERの価値を顕在化させる情報基盤のあり方を検討することで、多様なDERの普及と活用拡大による地域のレジリエンス向上に貢献していきたいと考えています。会員の皆様のご協力をお願いいたします。