メッセージ

2020.8.5

スマートレジリンネットワークの設立について

  • 代表理事山地 憲治

    東京大学名誉教授 / 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 理事長

     スマートレジリエンスネットワークが設立された背景には,カーボンニュートラル社会実現とレジリエンス強化という現代社会が抱える大きな2つの課題があります。カーボンニュートラル実現には,電化と電気の脱炭素化が不可欠です。そのためには,分散して存在する再エネ電源・電動車のバッテリーなどの分散型のエネルギーリソース(DER:Distributed Energy Resources)の大量導入や活用が必要になります。政府も脱炭素化に向けてグリーン成長戦略を定め,その中にも次世代電力マネジメントが追加されており,DERの普及・活用が重要分野として推進されるものと考えております。加えて,最近地震や台風など激甚化する自然災害による長期停電等が発生しており,レジリエンス強化も重要な課題となっております。

     これらの課題に対応するために,既存の電力インフラも次世代型のネットワークへ転換を目指し,技術的,制度的課題解決に向けて取り組まれているところです。既存の電力インフラに対する取り組みだけではなく,DERが普及拡大していくこと,DERがデータ連携されて効率よく,広く活用されることも重要なことと考えております。また,制度的な用意をする必要もあります。電力システム改革の中で,需給調整市場の開設や,配電事業ライセンス,アグリゲータライセンス等も始まっています。これらを活用して,スマート社会における新しいエネルギー社会を作っていくことで,新しい事業創出,ビジネスチャンスにも繋がっていくと考えています。

     DERが普及拡大した社会を構築するためには,国での議論や制度設計だけではなく,多様な分野の有識者・民間企業・団体等が,それぞれの利害関係を超えて連携し協業していくことが不可欠です。省庁・自治体とも連携し,産官学の枠を超えて一緒に取り組んでいく必要があります。その社会共創の基盤として,スマートレジリエンスネットワークがあります。スマート社会に向けてデジタル化が進行しておりますが,社会全体で進めていくことは容易ではなく,1企業,1団体の取り組みでは解決できない課題が数多くあります。それぞれの立場を超えて,社会の皆様とともにカーボンニュートラル社会やレジリエンス強化を実現するために,スマートレジリエンスネットワークの活動に共感いただき,ご協力いただけることを願っております。